日本有数の大都会である大阪市内に、全長わずか4.6km、2両編成の電車が30分に一本はしるだけのローカル線がある。これが大阪市内ってホントかい?、と言いたくなるような都会の秘境をじっくり探ってみる。
大阪市内に30分間隔のローカル線
大阪を代表する繁華街、難波から約1km西の汐見橋駅から、和歌山市や高野山を結ぶ幹線との乗換駅である岸里玉出までを結ぶ全長わずか4.6km、9分ほどの短い路線が汐見橋線。全線が大阪市内で、大手私鉄の南海電鉄の路線でありながら、電車はわずかに30分に1本、2両編成のかわいい電車が来るのみのローカル線である。
始発の汐見橋駅から
始発・汐見橋駅は、難波から地下鉄・阪神電車でわずか1駅の場所にありながら、1日の乗降客数はわずか647人(地下鉄は約15000人)、実際駅には人影がまばらで数えるほどである。
ローカルな風情がある一方で、広くとられた駅空間や、改札の上に飾られた味のある観光案内図からは、大手私鉄の始発駅としての姿が垣間見える。
実はこの汐見橋駅、かつては高野山へ向かう路線のターミナルだった。しかし1922年、大阪高野鉄道(現高野線)と難波-和歌山市を結ぶ南海鉄道(現南海線)が合併すると、後に高野線も難波に乗り入れるようになり、汐見橋線は支線化されてしまう。
高野線から切り離されたことにより、時代からも取り残されたようで、駅舎には古風な温度計、ホームに上がれば古びた屋根と柱。その一方で利用者に対し広すぎる駅を有効活用したAmazonの受け取りボックスが令和であることを示している。
おおよそ6分前に電車が駅に滑り込む。その頃にはホーム上にも俄かに人が増え、発車直前の車内には10人ほどの乗客がいた。乗り込んだ電車は1970年うまれの大ベテラン、汐見橋線は基本的に1編成のみで運用されており、他の電車とすれ違うことはない。
発車時刻を迎えゆっくりと走り出した電車は、都会を象徴するような都市高速と並走しながら南へと向かう。
東西を結ぶ大通りにまたがる踏切を通り過ぎると、大阪環状線と交差して次の芦原町駅に到着する。
芦原町駅
2駅目の芦原町は、大阪環状線芦原橋駅ともほど近く、工場と住宅が入り混じり下町風情が感じられる。太古の昔から太鼓の産地だったらしく、バス停のベンチが太鼓をモチーフにデザインされていたりする。駅のホームは上下で分かれているが改札は片側だけ、今では数を減らした構内踏切が生き残っている。環状線の芦原橋も快速が通過するため電車は15分に一本ほどであり、街は都市部でありながら静かだった。
芦原町を出るといよいよ阪神高速とはお別れ、都市部を離れた汐見橋線は新しい一面を見せてくれる。(次回後編に続く)
南海線各駅の2019年乗降人数
https://www.adnankai.co.jp/appeal/passengers/
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