木津川駅~津守駅 リバーサイドへ
前編に引き続き3駅目、木津川駅まで来ると、これまでより一層ローカル化が加速する。駅のベンチや掲示板は古びた木製で、トイレも古めかしい和式になる。自動券売機はあるが、ICカードのチャージはできない。汐見橋線の中でも乗降客数は141人と最も少ないこの駅前には舗装すらなくその先に細~い道がのびている。しかし都会の中の秘境からもあべのハルカスは見える。
駅前には道沿いには倉庫や工場が立ち並び、時折トラックとすれ違う。歩道のない狭い道を少しはらはらしながら歩くと巨大な人口構造物、木津川水門が見えてくる。
木津川は汐見橋線側の西成区と対岸の大正区を隔てているが、この間には千本松大橋一本しか橋がかけられていない。その上この橋は、木津川上を船が航行できる必要があるため33mもの高さがあり、渡るのも一苦労である。
そこで木津川を含め大阪市内の川には、市営で誰でも無料で利用できる渡し船がある。西成区と大正区の間には3つの渡船があり、木津川駅から近い落合上渡船場では日中15分間隔(ラッシュ時10分間隔)で航行されており、毎回5人程度に利用されていた。渡船は自転車と一緒に乗ることもできる。(ただし渡船はバイクは通せん)
同じく木津川に近い津守駅から電車にのるつもりで、対岸の大正区側を歩き、一つ南の落合下渡船場からまた西成区に戻る。
大正区側も川沿いには工場などが立ち並び大型車が行き交う。しかし住宅や店もあり、歩行者や自転車も多い。
津守駅
西成区側に戻っても川沿いは相変わらず人通りが少ないが、少し内側の津守神社のあるあたりまで来るとバスもあり人も増えてくる。このあたりの歴史は古く、落合下渡船場も天保時代には既に存在し、津守の地名に関しては万葉集にも登場しているとされている。
津守駅前には公園もあり周囲は普通の市街地になっている。ホーム上にも4人ほど電車を待つ人がいた。駅はあいかわらず簡素で、駅舎は相対的に新しそうだが、構内踏切、椅子は木、トイレは古すぎるからか閉鎖されていた。
西天下茶屋、岸里玉出
津守の次の駅、西天下茶屋は南海線や高野線と地下鉄線の乗換駅、天下茶屋からも近く周囲は普通の住宅地になっているため、近くの公園から子供の元気な声が聞こえてくる。その一方で駅はますます寂れ具合を増し、ディープさを醸し出している。
岸里玉出に向かうにつれて、線路は高架となり、周囲も活気ある大阪の住宅地といった雰囲気になってくる。高架線沿いのハトにエサやるな看板からは下町らしいユーモアが感じられる
岸里玉出駅は難波から並行してきた南海線と高野線が扇形に分岐する大きな高架駅であり、これまでの汐見橋線各駅と異なりローカル秘境感は全く見られない。元々の一緒だった高野線と汐見橋線との間には南海線が横たわっているため物理的にも隔てられており、南海線のホームの横にたたずんでいるため、南海線の支線のように思われる。
地域住民に利用される汐見橋線
南海の多路線と接続する岸里玉出以外の全駅が乗降客数3桁台の汐見橋線であるが、不要な盲腸線というわけではない。2019年の日経新聞の記事には、「津守駅の近くにある大阪府立西成高校は生徒の約3割が同線を利用する。」とある。実際に私も何度かこの路線に乗ったが、毎回少ないながらも乗客の姿が見られた。
かつて存在した建設中の新線、なにわ筋線との接続構想がなくなった今も廃止の予定はなく、2021年に汐見橋駅のリニューアルまでされている。実は改札の上にあった古風な観光案内図も現在風にリニューアルされたもので、ちゃっかり関西空港に路線が伸びている。
コロナ禍を経て、全国のローカル線では廃止の議論が巻き起こっているが、2両の小さい電車は地域の足として生き残っていくことだろう。
南海各駅2019年の乗降人数https://www.adnankai.co.jp/appeal/passengers/
日経新聞 都会に思わぬローカル線
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48430140Z00C19A8AA1P00/
コメント